花をする人 前編|Talk with :珠寳(花士/一般社団法人游神会代表理事)

花をする人 前編|Talk with :珠寳(花士/一般社団法人游神会代表理事)

原研哉 Kenya HARA
42:18
2024年11月26日
ja

キーワード

  • 花形 (かけい):華道の形式や流派を指し、また華道芸術家を意味する。
  • 東山文化 (ひがしやまぶんか):日本の室町時代後期に京都東山を中心に発展した文化で、シンプルさと禅の精神を強調する。
  • 同朋衆 (どうぼしゅう):室町時代に将軍や貴族に仕え、芸術や文化関連の事務を担当する専門家集団。
  • 立て花 (たてはな):古い華道形式の一つで、花材の自然な形態と垂直感を強調する。
  • 無双新古流 (むそうしんこりゅう):日本の華道流派の一つで、銀閣寺と縁がある。

概要

今回の「低空飛行」ポッドキャストでは、華道芸術家のシュホー (しゅほう) を迎え、彼女の独特な華道の道と東山文化への理解について話し合いました。シュホーは華道の家系出身ではなく、偶然の機会で華道の世界に入り、自証寺で花形を務めています。彼女は華道の根源をたどり、特に室町時代、足利義政が推し進めたシンプルな美に深く影響を受けています。故人の華道大師・岡田孝三 (こうどうおかだ) から学び、シュホーは華道の真髄、つまり花材を細かく観察し、空間や垂直と水平を把握することで、最終的に人、花、空間が一体となる境地に達することを深く理解しました。彼女は華道が単なる技術ではなく、精神的な修行であり、孤独を耐え、心身の健康を保つ必要があると強調しています。

洞察

このポッドキャストの内容は、日本の伝統華道の深い分析であると同時に、現代デザインに新しい視点を提供します。本当の美は表面的な華やかさにあるのではなく、事物の本質を深く理解し、細部に至るまで追求することにあることを教えてくれます。 華道における「垂直」と「水平」の強調を通じて、現代社会が過度に標準化や「四角形化」を追求する傾向を反省し、デザインにより多くの自然と人間性の要素を取り入れることができます。

観点

01「自然を師とする」

華道は単に自然を模倣するのではなく、花材を観察し理解することで、その内的な生命力を表現することです。

02 「Less is more」

東山文化が推し進めるシンプルな美は、不必要な装飾を減らすことで、人々の想像力と感受性を刺激することを強調しています。

03 「心身合一」

華道は単なる技術の訓練ではなく、精神的な修行であり、自分自身と空間を感じ取ることで、人、花、空間が一体となる境地に達する必要があります。

深掘り

華道:垂直、水平と侘び寂びの修行

「低空飛行」ポッドキャストの最新回では、司会の原健屋と華道芸術家のシュホーが華道芸術について深い対話を展開しました。シュホーは独特な視点から、華道の背後にある深い文化的な底流と哲学的な思考を聴衆に明かしました。

「花形」から「花の譜」へ:珍しい華道の道

シュホーは伝統的な華道家系出身ではありません。母親の提案で花と出会い、震災を経験した後、毅然として華道の世界に身を投じました。この経験は一筋縄ではいかず、2004年に「花形」を自称し、2015年に独立して「花の譜」を創設しました。

シュホーの華道への理解は、表面的な技術レベルに留まらず、その歴史と文化的な根源にまで深く踏み込んでいます。彼女は室町時代の東山文化に深く惹かれ、それが日本の美意識の重要な源であると考えています。応仁の乱の後、日本社会は深い文化的な反省を経て、人々はシンプルで控えめな美を追求するようになり、この美学思想は後世の芸術や文化に深く影響を与えました。

東山文化:シンプルな美の源

東山文化は日本の室町時代後期に京都東山を中心に発展した文化で、その代表的な人物は足利義政です。足利義政は応仁の乱を経験した後、贅沢は無益であると感じ、シンプルで控えめな美を追求するようになりました。彼は東山に隠棲し、銀閣寺を建造し、そこで茶道や華道などの芸術形式を推し進めました。

ポッドキャストでシュホーは特に同朋衆に言及しました。これは芸術家や文化人からなる集団で、足利義政の周りで活躍し、東山文化の形成に重要な貢献をしました。同朋衆は芸術創作において成果を収めるだけでなく、足利将軍家が収集した芸術品の整理や鑑定を担当し、それに対応する装飾規則を定めました。これらの規則は後世の茶道や華道などの芸術形式に深い影響を与えました。

岡田孝三との出会い:禅のような修行

華道の根源をたどる過程で、シュホーは故人の華道大師・岡田孝三に出会いました。岡田孝三の教え方は非常に独特で、禅の精神が溢れていました。彼は直接華道の技術を教えるのではなく、シュホーに庭の掃除、水汲み、柴割りなど最も基本的なことから始めさせました。

岡田孝三はシュホーに対する要求が非常に厳しく、苛酷なほどでした。彼はシュホーのすべての努力を否定し、彼女を非常に落胆させました。しかし、シュホーは諦めず、学び続け、最終的に華道の真髄を悟りました。

岡田孝三は、華道は単なる技術の訓練ではなく、精神的な修行であると強調しました。花材を細かく観察し、空間や垂直と水平を把握することで、最終的に人、花、空間が一体となる境地に達するのです。

垂直と水平:華道における幾何学的な美

華道において、「垂直」と「水平」は非常に重要な概念です。華道芸術家は花材を調整し、花器の中で調和のとれた垂直と水平の関係を演出する必要があります。この関係は視覚的な美だけでなく、深い哲学的な思考を含んでいます。

垂直は生命の上向きな活力を表し、水平は安定とバランスを表します。垂直と水平を把握することで、華道芸術家は生命への畏敬の念と調和の追求を表現することができます。

孤独な修行:華道芸術家の運命

ポッドキャストの最後で、シュホーは華道は孤独な修行であると語りました。華道芸術家は長時間花材と向き合い、不断に思考し探求する必要があります。この過程で、彼らは孤独や迷いを感じることがあります。

しかし、正にこの孤独な修行こそが、華道芸術家が華道の真髄をより深く理解し、本当に生命力のある作品を創作することができるのです。

先見的な思考

シュホーの華道の道を分析することで、華道は単なる芸術形式ではなく、生活様式であり、精神的な追求であることがわかります。現代社会では人々の生活リズムがますます速くなり、ストレスも増えています。華道は私たちに足を止め、自然の美を感じ、そこから心の平穏と安らぎを得ることができます。

さらに、華道は現代デザインに新しいインスピレーションを提供することができます。華道における「垂直」と「水平」の強調を通じて、現代社会が過度に標準化や「四角形化」を追求する傾向を反省し、デザインにより多くの自然と人間性の要素を取り入れることができます。

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